カラダの細胞や魂が喜ぶ、いのちのつまった野菜つくりを追求し、自家採種、無肥料、自然農、自然農法、自然栽培を実践中。農薬を使用しないのではなく、そもそも使用する必要がないことが健康の証です!


by shizenchiyuryoku

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500年の自給自足


「日本の伝統農法体験」というツアーに参加しました。わずか8軒が500年にわたり自給自足に近い暮らしを営んできた集落を訪れ、現在80歳の長老がその知恵を公開してくださる!という貴重な企画であったので迷わず即刻に申込み参加しました。


「天空の里」大沢集落は静岡県北部の山間地域にある水窪(みさくぼ)町からさらに上の標高750メートルにあります。到着した日は雨あがりの霧が立ち込めており集落や畑の景色はまさに天空の楽園を思わせます。
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貴重で普遍的な知恵を惜しみなく語っていただいた別所さん(80歳)のお話を基本にレポートします。


1、集落の歴史について

今から500年ほど前の戦国時代に「木地屋(きじや)」(ろくろを使って椀や盆など、木地のままの器物を作る職人)の藤谷氏が殿様に献上したところ気に入られ、好きなだけ山をやると山を与えられたのが始まりであった。
藤谷氏は山を公平に8区分し8軒が暮らせるように分配した。
8軒以上になると自給自足の可能な範囲を超えてしまい持続不可能になるという先見力のため、長男が継ぐことで将来も8軒を超えないようにと取り決めた。
また地主と小作というような上下関係が出来ぬよう、公平に山を区分したことも驚嘆に値する。



2、ライフラインについて

水は湧き水を、現在は井戸を掘って利用している。
火力は薪であり、現在はプロパンガスもある。風呂は現在も薪である。(最高でした)
電気は現在は中部電力から送電されているが、50年前までは小水力発電機2機で8軒分を自給していた。(なんと最先端!)
(聞き忘れたが電気の前はろうそくや行燈であったのは日本中同じであったと思う)
ライフラインも当然ながら地域内で自給できていたのである。


3、食べ物について

米は沢水の近くで少し生産されたらしいが、山であるから量はなかったようである。
主食は麦飯であり、麦8米2の配合で、米がなくなるとアワとヒエを使ったようだ。
畑ではムギ、ヒエ、アワ、芋、大豆、小豆、ソバを主に作った。
また共有のトチ山を設けトチの実を利用した。普段食にはトチ粥というトチと麦と米を混ぜたものを、正月にはトチ餅を食べたということである。

今回の体験では囲炉裏を囲んで伝統食をいただいた。
メニューは
里芋を囲炉裏であぶり味噌で食べる「串里芋」
きび(ここでいうきびはとうもろこしのこと)とサツマイモとささげ豆の入った「きび煮」

大根の漬け物
焼き椎茸
栗の渋皮煮
こんにゃくのくるみ和え

いただいたものはほぼ自給作物からできている。大変なごちそうであった。

昔の普段食は3食とも麦飯を中心に、具だくさんの汁、漬け物であったことが「聞き書き 静岡県の食事」(農文協)にある。
別所さんも「めんぱ」という木の弁当箱にムギ飯を詰め山仕事に出かけ、昼食は10時と2時の2回とったとおっしゃる。

(これこそ日本人の食べるべき健康食であろうと思う。私はできればムギでなく玄米を希望だけど、慣れるとムギも平気かなあ?)


4、食を支えてきた畑作の方法

畑は写真にあったように急斜面である。
したがって石を積んで段々畑にすることが必須である。
大沢集落の特徴は段々畑が平らでなく斜めであることである。
通常は等高線にそって平らに畝を作るのが一般的であるが、30度を超す急こう配の畑で傾斜に沿った縦畝を作っている。
横畝にしたほうが土や水が流れるのを防ぐように思えるが、縦なのである。
日本にもこのようなケースは数少ないらしい。
しかしこれこそが水の流れを良くして、土を流さず、作物の出来を良くし、連作を可能にしているのだそうである。


そして究極のノウハウが「掘り込み(ほりごみ)」と呼ばれる手法である。
夏に刈り乾燥させた「かや」や「わらび」などの山草を秋に畑に入れ込んていく。
これによって畑土は柔らかくなり、また雨水の流れがよくなり土が谷へ流れなくなる。
これを昔からずっと続けてきた。やってみると傾斜もあり重労働である。
ムギを作るためにやったそうだ。

こうすることでほとんど肥料も投入しなくて良いらしい。そして連作も可能である。
逆にこれをしないと化学肥料を使っても地力は衰え生育も悪くなるという。
掘り込みを何年続けたら土は良くなりますか、と聞いたら「最低10年だ」とのお答えであった。
まさに自然農法である。

そして大切な山草を確保するために草を生やすためだけのエリアが決めてある。
現代の効率至上主義の農業には完全に失われた持続可能な伝統農法がここにあった。


ちなみに昔は大沢集落でも「焼畑」農業がなされてきた。
山の木を切り一帯を焼いて、
1年目はソバを作る
2年目は豆をつくる
3年目はアワかヒエをつくる
4年目は小豆をつくる
(普通は2年続けて作ると地力は衰えるようである)
5年目は昔は杉を植えた(木材が売れた時代のこと)
そして20年の間に草が落ち豊かな土地に戻る。
これを場所を変えながら順繰りに続けていく知恵である。


5、風土が守る味

ここでは在来作物としてずっと種取りをして品種が守られてきた。
特に「むらさき芽(水窪在来のじゃがいも)」は平地の水窪町でもつくられているが、大沢集落のものは味が異なり甘い、という。
大沢集落の種芋を下の集落で作っても同じ味にならないという。

その理由について別所さんは、
「高度による昼と夜の気温差」「日当たり」「雨量」「風」をあげていた。
特に「高度による昼と夜の気温差」が大きいとおっしゃる。

このことはとても重要である。
要するに人間の様々な農法なんかより、「自然界がつくるそこにしかない風土」が味をつくるのである。

じゃがいもの原産地は温度差のあるアンデス高地である。
野菜は原産地のことをしっかりとDNAに記録している。
だから遠い昔に暮らした故郷アンデスに似た地域でこそ、本来のチカラを発揮する。
日本の温暖な平地で肥料をたっぷりやった品種改良ジャガイモは味がぼけた別物である。

私も種イモをいただいてきたから植えてみるが、同じ味は出せないと、初めからあきらめている。
しかし、生命力あるジャガイモはできるだろうと大いに期待している。


6、おわりに

私たちは戦後の経済成長のおかげで良い時代に生まれたが、失ったものも大きい。
本当に持続可能であり、そして健康で美味しいものは古い伝統の知恵の中にある。
便利さを手放せない部分もあるが、伝統を生かすことが日本人の生命を永続的に守ることにもなる。
そのことを五感で改めて認識させていただいた貴重な体験であった。


今回、惜しみなく伝えていただいた別所さんや集落の方々、又この企画を立案してくださった静岡県西部農林事務所の鈴木さんや同僚の方々、楽しく体験をご一緒できた参加者の皆さんに心から感謝いたします。



追伸

別所さんが案内してくださる「ランプの家なかや」では皆さんも伝統食などの体験ができます。(有料)
ご興味がありましたら別所さんまで電話でお問い合わせください。
別所賞吉さん 0539-87-2773




畑の風景
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製茶工場にあった含蓄ある言葉
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囲炉裏を囲んで食事
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串里芋
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ひえ煮
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左が在来「むらさき芽」右はよくあるメークイン
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むらさき芽を説明する別所さん
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掘り込みの実習。別所さんは80歳とは思えない!!
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こんにゃく芋と別所さん
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by shizenchiyuryoku | 2012-11-08 18:34 | 基本的な考え方 | Comments(0)

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